コクリバ 【完】
また、子供を傷つけてしまったらと思うと、足が前に進まない。

ルナちゃんのお母様の声が甦ってくる―――

『ルナが泣いています……』



「ありがとう。マスター」

カチャ、とカップをお皿に戻し、立ち上がった。

「元気出た?」
「うん。出た」

マスターがじっと私を見ている。

「はぁ。ダメか……奈々ちゃん、早く甘えられる彼氏作りなよ」

ため息交じりのマスターの言葉に乾いた笑顔を張り付けて、外に出た。



肌寒くなった秋の気配に、ぶるっと震える。
薄手のパーカーではこの時期は寒い。


一人暮らしの家も、冷えていた。
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