コクリバ 【完】
「これは俺からの奢り」

優しい口調のマスターに、苦笑を返した。

なんで一つだけ?

「俺の分はないんですか?」

果敢にも高木先輩が聞いている。

「おまえに飲ませるウインナコーヒーはねぇ!」
「江戸っ子ですか?」
「違うけど……」
「……」
「……」

頭が痛い。

「もうマスター。ウインナコーヒーあと一つ追加してください」
「俺はいいよ」

高木先輩が笑っている。

「先輩、おかわりいらないですか?」
「あぁ」

もう話は終わったから帰るってこと?

そうするのが当然なんだけど、それ以上何もないっていうのは分かるんだけど、身体が締め付けられる。

私たちの会話を黙って聞いていたマスターの視線が、先輩から私に移動してきたとき、

「彼が奈々ちゃんの?」

意味不明な質問をされた。
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