コクリバ 【完】
「おまえは幼稚園の先生になったんだろ?」
「はい」
「似合ってるな」
「そうですか?」

先輩に褒められて本気で嬉しい。
頑張って良かったって全身が震えそう。

「合コンに行きまくってるって聞いたけどな。何やってんだよ」

先輩がニヤリと笑って、被っていたキャップを外した。

なんでそんなことまで知ってるんですか?

短めの黒髪の下から、切れ長の目が真っ直ぐ私を見ている。

「行きまくってなんかないですよ。兄の話は信じないでください」
「緒方さんじゃなくて、吉岡から聞いた」
「よ……吉岡が?」
「あいつ、まだ、おまえのことが好きなんだな」

一瞬、喉が詰まった。

「そんなことないですよ」
「おまえら付き合ってたんだろ?」
「な…んで、それを……」

ドキドキする。

悪いことしたのが見つかった時のような。
それだけは知られたくなかったなんて思ってしまう。

「知らないと思ってたのか?高校の頃だろ?かなり仲良かったそうだな」

そこまで知ってるんだ。

「……」

逃げられないなら、目を閉じて黙って俯くしかない。

「あいつがキャプテンにならなかったのは、“7”番を付けたかったからとか聞いたぞ。“ナナ”番な。それだけおまえのこと好きだったんだろ?」
「もういいじゃないですか」

耳が熱い。
浮気の証拠を突きつけられてるみたいで……

こんな話早く終わらせたい。
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