コクリバ 【完】
久しぶりの再会を懐かしんだ後、喜八を出た。
駅まで送ると言った私の言葉は無視され、「家まで送る」と言われ、見慣れた道を高木先輩と歩く。

いつもの私の世界に、高木先輩がいることが不思議だった。
横に並んで歩いても、あの頃とは違う距離感に寂しさを感じる。

寒さに一瞬身震いすると、先輩は何も言わず、ジャケットを貸してくれた。

「いいですよ。高木さんが寒いでしょ?」

「俺は鍛えてるから大丈夫だ。おまえはもっと食べろ」

本当はもっと食べられるんだけど、今日は特別入らなかっただけ。

「高木さん。身体つき変わりましたね」

「いやらしい目で見ないでくれる?」

「ちがっ…見てないです!私はただ、鍛えてるって……」

「あはは……おまえも変わったな」

そう言って自然に、本当にごく自然に肩を抱かれた。
あまりにもさりげなかったから、抵抗するなんて考えもしない。

「……」

慣れてる―――

そう感じない訳にはいかなかった。

「おまえも女らしい身体つきになったな。俺のだったのに、知らない間に綺麗になりやがって……」

「先輩だって、私の知らないところでいろんな人と付き合ってたんでしょ?」

「いや。誰とも付き合ってないさ」

「嘘つき」
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