コクリバ 【完】
駆け上がるように二階の一番左端の自分の部屋に行き、かばんから鍵を取り出す。
振り返って下を見ると、じっと私を見ている切れ長の目と目があった。

数秒間見つめ合った気がする。でも本当は一瞬だったかもしれない。

ペコリと頭を下げ、ドアを開けて逃げるように中に入り込んだ。


もう、足が動かない。


膝から力が抜けて、その場にずるずると座り込んでしまった。

ドキドキと鼓動が早い。

もうあの頃の私とは違うのに…6年前の記憶に縛られている気がする。
高木先輩のことなんて、もう何とも思っていないのに……


部屋に入ろうと立ち上がりヒールを脱いだ時、ふと気になって玄関のドアノブに手をかけていた。
考えるよりも先に身体が動いたっていう方が正しい。

そっとドアを開けて下を覗く。

あの人はもういないと思いながら……

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