コクリバ 【完】
『だったらおまえ今日は帰って来い』
「なんで?」
『いいから。高木と一緒じゃないんだったら帰って来い』
「無理。明後日からの用意もあるし……」
『じゃ、俺が行ってやる』
その向こうで母の声が『私も行く』と言っている声が聞える。
「いいよ。そんな。わざわざ来る必要ないって。何も怒られるようなことしてないから……」
そう言うけど兄は聞き入れず、帰る道の途中だからと強引に訪ねてくることを了承させられた。
どうせシングルマザーになると言ったことについて、聞かれるんだろうけど……
夕方近くになって、家のインターホンが鳴った。
重い腰を上げてドアを開けると、兄が一人で立っていた。
「お母さんは?」
「置いてきた」
「なんで?」
「おまえとゆっくり話ができないからだろ」
唯一の味方がいなくなり、孤独な戦いになることを覚悟した。
兄は勝手にどんどん中に入って来て、部屋をざっと見渡している。
「あんまり見ないでよ。コーヒーでいい?」
「いいから座れ」
兄は既に小さなダイニングテーブルに陣取っていた。
それを無視してゆっくりコーヒーを淹れて、私も戦いの席についた。
「なんで?」
『いいから。高木と一緒じゃないんだったら帰って来い』
「無理。明後日からの用意もあるし……」
『じゃ、俺が行ってやる』
その向こうで母の声が『私も行く』と言っている声が聞える。
「いいよ。そんな。わざわざ来る必要ないって。何も怒られるようなことしてないから……」
そう言うけど兄は聞き入れず、帰る道の途中だからと強引に訪ねてくることを了承させられた。
どうせシングルマザーになると言ったことについて、聞かれるんだろうけど……
夕方近くになって、家のインターホンが鳴った。
重い腰を上げてドアを開けると、兄が一人で立っていた。
「お母さんは?」
「置いてきた」
「なんで?」
「おまえとゆっくり話ができないからだろ」
唯一の味方がいなくなり、孤独な戦いになることを覚悟した。
兄は勝手にどんどん中に入って来て、部屋をざっと見渡している。
「あんまり見ないでよ。コーヒーでいい?」
「いいから座れ」
兄は既に小さなダイニングテーブルに陣取っていた。
それを無視してゆっくりコーヒーを淹れて、私も戦いの席についた。