コクリバ 【完】
『おはよう。今日は予定ある?なければ一緒にお昼でもどうですか?来年度の行事予定について教えてもらいたいことがある』

翌日曜日に届いた洋祐先生からのメールに罪悪感を感じる。

しばらく悩んで、お昼だけならと思って、OKの返信をしたけど。


待ち合わせは南口の階段の下。
どうしても階段の前にある木に目が行ってしまう。

遅れてきた洋祐先生は書類用のバッグを持っていて、だから「これは仕事だ」と言い訳して……
誰に対しての言い訳なんだろう。


「お待たせ。奈々先生、南口の方に美味しい和食屋さんがあるの知ってました?そこが最近ランチも出したらしいんだけど、そこでいい?」
「はい。なんてとこですか?」
「んー。喜八だったかな」

ズキンと胸が痛んだ。

そこはダメだ。
そこだけは行きたくない。

「洋祐先生。北口の方にしませんか?」

「え?どこか知ってる?」

口から出た言葉に慌てて都合の良い言い訳を付ける。

「夜は居酒屋なんですけど、ランチもやってて……そこが半個室なんでゆっくり仕事の話もしやすいかもしれません」
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