コクリバ 【完】
洋祐先生の言う通りかもしれない。


この手を取れば私は幸せになれるのかもしれない。

信じていいのかもしれない―――





だけど、最後に見た切れ長の目が浮かんでくる。

左頬を上げて笑ったあの人の笑顔が、頭の中をいっぱいにする。

あの人の低い独特の声が私の名前を呼んで、私をすっぽりとその広い胸に包み込んでるような錯覚が起きる……



洋祐先生の左手から視線を逸らせた。

あの人に会ってしまった今は、他の人を考える余裕がなかった。





「すみません」



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