コクリバ 【完】
美術室から昇降口まで、高木先輩の背中を見ながらついて行く。
不思議な感じがする。
これまでは遠くからとか体育館の網越しでしかその姿を見たことがない人が、私の目の前を歩いている。
全く現実感がない。
靴を履きかえて外に出ても高木先輩は何も話さないから、なんだか居心地が悪い。
そんな落ち込み気味の気持ちの時に、昇降口の前に見覚えのある黒い自転車がとめてあるのを発見した。
先輩が真っ直ぐその自転車に向かうから、間違いないと思う。
「先輩。チャリ通なんですか?」
「あぁ」
やっと話せた。
「……」
「……」
続かない。
もう高木先輩が分からない。
なんのために迎えに来てくれたんだろう。
まさか兄に頼まれたとか……
高木先輩が前を歩いて、私がその自転車の後輪から、さらに1メートル後ろを歩くというスタイルでもうかなり学校からも離れた。
なのに先輩はまだ一言も口を利かない。
あ、でも、これって……
私にとっては初めて男の人と一緒に下校するという、記念すべき日だってことに気づいた。
高校生になってやりたかったことの一つ。
その初めての相手が、高木先輩だなんて……
別に付き合ってなくても構わない。
つい顔がニヤついてしまう。
カバンを胸に抱え直す。
やっぱり男の人と一緒に帰るときは、このポースでなくては……
気が付くと高木先輩の自転車が目の前に止まっていて、
「はっ!」
危うくぶつかりそうになった。
「ちょっと寄っていかないか?」
やっと先輩が喋ってくれたと思ったら、川沿いの遊歩道をアゴで示された。
不思議な感じがする。
これまでは遠くからとか体育館の網越しでしかその姿を見たことがない人が、私の目の前を歩いている。
全く現実感がない。
靴を履きかえて外に出ても高木先輩は何も話さないから、なんだか居心地が悪い。
そんな落ち込み気味の気持ちの時に、昇降口の前に見覚えのある黒い自転車がとめてあるのを発見した。
先輩が真っ直ぐその自転車に向かうから、間違いないと思う。
「先輩。チャリ通なんですか?」
「あぁ」
やっと話せた。
「……」
「……」
続かない。
もう高木先輩が分からない。
なんのために迎えに来てくれたんだろう。
まさか兄に頼まれたとか……
高木先輩が前を歩いて、私がその自転車の後輪から、さらに1メートル後ろを歩くというスタイルでもうかなり学校からも離れた。
なのに先輩はまだ一言も口を利かない。
あ、でも、これって……
私にとっては初めて男の人と一緒に下校するという、記念すべき日だってことに気づいた。
高校生になってやりたかったことの一つ。
その初めての相手が、高木先輩だなんて……
別に付き合ってなくても構わない。
つい顔がニヤついてしまう。
カバンを胸に抱え直す。
やっぱり男の人と一緒に帰るときは、このポースでなくては……
気が付くと高木先輩の自転車が目の前に止まっていて、
「はっ!」
危うくぶつかりそうになった。
「ちょっと寄っていかないか?」
やっと先輩が喋ってくれたと思ったら、川沿いの遊歩道をアゴで示された。