コクリバ 【完】
いつのまにか、気を失うようにして寝ていたらしい。
気付くとちゃんとベッドに入っていて、布団が掛けられている。

隣りには普段感じない温もりもある。

薄く目を開けて隣を見ると、切れ長の目と、目が合った。

「……あ」
「あ、じゃねーだろ」
「おは、よう」
「あぁ。おはよう。早いな」
「先輩こそ」
「おまえ……名前で呼ぶのはベッドの中だけか?」

その言葉で一気に昨夜のことを思いだした。
先輩の熱い肌や、力強い抱擁と苦しそうに歪められた目が……

「な……」
「まぁ、ゆっくりでいいけど……」

そう言って左頬を上げる仕草も妖艶で……恥ずかしすぎる。

離れるといい歳して真っ赤になった顔を見られそうで、自然とすり寄っていた。

「なんだよ」
「いいじゃないですか」
「奈々……」
「はい」
「……のか?」
「え?」
「……いや、なんでもない。シャワー借りていいか?」

聞こえなかっただけなのに、

「なんですか?気になります」

先輩の左頬があがった。

「気にするな」
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