コクリバ 【完】
そんなことをしていたから、結局、家を出たのは昼過ぎ。
バレンタインのプレゼントは駅ビルで手袋を買い、チョコも特設コーナーで、あまり選ばずに決めた。
帰りにスーパーで夕飯の材料を買い、早目の夕飯を一緒に作った。
料理が得意だと言うだけあって、高木先輩の料理は凝っていた

スパゲティじゃなく、フェットチーネ。
スープには白ワインを入れる徹底ぶり。
私の普段の料理なんて、子供のそれのような気がする……

「今度、フライパン買ってきてやる」

道具にまでダメ出しをされ、ため息が出る。

こんな人だったっけ?

6年間の想いは高木誠也という理想の男像を作りだしたのかもしれない。

隣りにいる実在の人物に少しの違和感を感じる。

ただ食後のコーヒーだけは褒められた。

コーヒー豆はこだわりがあって、カフェ・ド・マティスのもの。

そこを解ってくれたのが単純に嬉しくて、鼻の穴が広がった―――のをしっかり見られていて、笑われた。
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