コクリバ 【完】
再演
高木先輩が帰ったその日から、メールをするようになった。
先輩はメールの中では優しかった。聞いたことにはちゃんと答えてくれるし、私の心配もしてくれてるようだ。
ただ、返信される回数が極端に少ない。
最初の何日かは気になってたけど、そのうちそれにも慣れてきた頃、出航だとかで返信が途絶えた。
だからしばらくは我慢してたけど、「別に返信なくてもいいや」と、毎晩メールするようになった。
それは独り言に近い、日記みたいな内容だけど、送らずにはいられなかった。
それだけでも繋がっていたかった。
そして今年も卒業の季節がやってきた。
去年とは全く違った気持ちで迎えたその日は、穏やかな日だった。
毎年、必ず思い出してしまう制服姿の高木先輩の背中は、今年は単純に懐かしい想い出として受け止められるようになっていて、そんな変化に気付いた時、顔が緩んだ。
ただ、一緒に赤い傘までも思い出してしまうことは避けられず、頭を振って無理やり現実の仕事に取り組んだ。
「真理子先生。手伝うことありますか?」
「じゃ、一緒にこれ作って」
卒園式の時にステージを飾る紙の花を作っていた真理子先生に合流した。
「そうだ。真理子先生。3月の最終土曜日って仕事ですか?」
「なんで?」
「もし当番入ってなかったら、自衛隊の艦に乗りにいきませんか?」
「ふね?なんで?」
「じゃ、いいです。他の人誘います」
「待った。なんで?って聞いただけで、行かないとは言ってないでしょ」
「一般公開があるらしいんです」
「あんた、ほんとにマッチョ好きに目覚めたの?」
「はい」
「……マジ?」
「彼氏が自衛隊員です」
「は?誰が?」
「彼氏です」
真理子先生が固まっている。
その様子を見て、笑い顔が隠せなくなる。
「いつの間に…」
「先輩。お先です!」
「キャー、ムカつくー」
先輩はメールの中では優しかった。聞いたことにはちゃんと答えてくれるし、私の心配もしてくれてるようだ。
ただ、返信される回数が極端に少ない。
最初の何日かは気になってたけど、そのうちそれにも慣れてきた頃、出航だとかで返信が途絶えた。
だからしばらくは我慢してたけど、「別に返信なくてもいいや」と、毎晩メールするようになった。
それは独り言に近い、日記みたいな内容だけど、送らずにはいられなかった。
それだけでも繋がっていたかった。
そして今年も卒業の季節がやってきた。
去年とは全く違った気持ちで迎えたその日は、穏やかな日だった。
毎年、必ず思い出してしまう制服姿の高木先輩の背中は、今年は単純に懐かしい想い出として受け止められるようになっていて、そんな変化に気付いた時、顔が緩んだ。
ただ、一緒に赤い傘までも思い出してしまうことは避けられず、頭を振って無理やり現実の仕事に取り組んだ。
「真理子先生。手伝うことありますか?」
「じゃ、一緒にこれ作って」
卒園式の時にステージを飾る紙の花を作っていた真理子先生に合流した。
「そうだ。真理子先生。3月の最終土曜日って仕事ですか?」
「なんで?」
「もし当番入ってなかったら、自衛隊の艦に乗りにいきませんか?」
「ふね?なんで?」
「じゃ、いいです。他の人誘います」
「待った。なんで?って聞いただけで、行かないとは言ってないでしょ」
「一般公開があるらしいんです」
「あんた、ほんとにマッチョ好きに目覚めたの?」
「はい」
「……マジ?」
「彼氏が自衛隊員です」
「は?誰が?」
「彼氏です」
真理子先生が固まっている。
その様子を見て、笑い顔が隠せなくなる。
「いつの間に…」
「先輩。お先です!」
「キャー、ムカつくー」