コクリバ 【完】
それから数日後、年長さんたちが卒園していった。
受け持ってはいないけど、預かり保育とかで遊んだ子供たちが凛々しい顔をして卒園証書を受け取っていく姿に、感動して泣いてしまう。
小学校に行っても頑張ってね。と、その小さい背中を見送った。

ヒマワリ組の子供たちも、自分たちが一番上のお兄さん、お姉さんになったという意識ができたのか、卒園式を境によく下のクラスの子の面倒をみているところを見かけるようになった。
それだけで嬉しくなってまた泣きそうになる。


最後の参観日に、保護者を前にして挨拶するときは、

「発表会のときは、ご迷惑とご心配をおかけして……」

次の言葉が出なくて、口元を押さえていると、

「ななせんせい」
「せんせい。がんばれ」
「せいせーい」

子供たちが口々に励ましてくれて、その優しさに胸がいっぱいになって、みんなの前でボロボロ泣いてしまった。
良いクラスを受け持たせてもらったと思う。


そうして春休みに入った。

高木先輩からの返信はまだこない。


来年度は、年少さんの担任に決まった。
ほんとは年長さんに持ち上がりたかったけど、希望は叶わなかった。

来年度、年長さんは初めてサマーキャンプに行くことが決定していて、そのためにベテランの先生たちが年長さんの担任になっている。

真理子先生も年長さんの担任の一人。

ちょっと羨ましい。

その日、高木先輩からメールがきた。

『日本に戻ってきた。
 そっちに着くのは明後日。
 ヒマワリ組おつかれさま。
 次もがんばれ』

絵文字も顔文字もないメールだけど、叫びたいくらい嬉しかった。
私の日記風のメールをちゃんと読んでくれたらしいことに、胸が暖かくなる。

お帰りなさいということと、もうすぐある一般公開を楽しみにしている、とすぐに返信した。

そのメールへの返信があったのは翌日。
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