コクリバ 【完】
「誰にもらったんだ」

尋問は続くらしい。

「……」
「おい!」
「……吉岡です」
「やっぱりか…」

黙秘なんて無理だ。

「なんで知ってるんですか?」

少しの反抗心で抵抗してみた。

「あの時、直前に吉岡とすれ違ったから。なのにおまえのことを聞いても吉岡は口を割らなかった…」

やっぱり刑事じゃん。
そんな前から知ってたなんてズルい。

「おまえまだ吉岡のことが好きか?」
「え……」

これは想定外の質問。
先輩は、私が吉岡にフラれたと思っているんじゃ……

違う。とも言えない。

あの日、吉岡から告白されるとばかり思っていた。
返事はもちろんOKと。
まさか彼女がいると告げられるとは思わなかった。

私は吉岡にフラれたんだろうか……

「まだ好きなら……言ってやろうか?」
「え?」
「吉岡に。ちゃんとおまえの気持ちを聞くように。それでダメなら諦めろ」

諦めろって……

「それはないです。もう吉岡のことはいいんです」

強がりじゃない。
だって今は……

「もういいのか?」
上から聞こえる独特の声に
「はい」
真っすぐ顔を上げて答えた。
はっきりと、なんならちょっと口角もあげながら…

だけど、先輩の眉間のシワが深くなる。

「他に好きな奴がいるのか」

また尋問?

だけど、なんか、分かってしまった。

先輩が何を言おうとしてるのか。
って言うか、なんで今こうして二人でいるのか。

だから、
「はい」

そう答えた。
< 49 / 571 >

この作品をシェア

pagetop