コクリバ 【完】
ショッピングモールに入ってからは、ランチを兼ねて入ったカフェでだらだらと話をしていた。

典子先生も四人になると私とも普通に話をしてくれたけど、「自衛隊員の誰が良かった」とかいう話のときは、何も言わずただ笑って聞いていた。

テーブルの上に置いた携帯が鳴ったのは、ウインドウショッピングに疲れて2件目のカフェでまったりしていた時で、全員の目が私のシンプルなスマホの画面に集中した。

そこには、高木誠也の文字が浮かんでいて、

「はい」
「終わった。どこにいる?」
「近くのショッピングモール」
「分かった。迎えに行く。正面玄関分かるか?」

たったそれだけで電話は切れた。

「迎えに来るって」
「もー。なんで私に連絡くれないの?」

頬を膨らましながら真理子先生が席を立つのを笑って見ながら、全員が素早い行動で外に出た。
向かう先は化粧直し。

「みか先生。それはやりすぎだって」
「典子だってチークが浮いてるよ」
「真理子先生、ちょっと見えない」
「もー、奈々はどうでもいいでしょ」

狭い鏡の前でバトルを繰り広げた私たちが、待ち合わせの正面玄関に行ったときには、既に高木先輩と山下さんがいた。

「ここから少し歩きますけど、大丈夫ですか?」

山下さんが笑顔で聞いてきた。

「はい。もちろんです」

笑顔でそれに答えた真理子先生に、
「タクシー呼びましょうか?」
と小声で聞いたら、脇腹をパンチされた。
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