コクリバ 【完】
「おまえ、サトルにインターハイの予選のこと言ってくれたらしいな」
「さぁ、覚えてません」
「サトルが言ってたぞ。インターハイ出たかったなって」
「そうですか」
「ありがとな」

ゆったりした時間が流れる中、カクテルが運ばれてきた。
二つ並んだグラスが、オレンジ色のライトの中で輝いている。

「ずっと悩んでいた」

先輩は海を見ながらグラスを持ち上げた。

「はい」
「サトルから本当のことを聞いたあと。すぐにおまえに電話したけど、かかってこなくて……おまえに対する気持ちは、ただの執着なんじゃないかって」
「執着?」
「固執って言うか…好きとか忘れられないとかじゃなくて、いろいろあんだろ?」
「執着なんですか?」
「さぁ。どうだろな。考えすぎて分からなくなった」
「……そうですか」
「あぁ。だけど一つだけ思ったのは、会いたいってことだ。おまえの横に誰がいても構わねーから、おまえに会いたかった」

胸がドキンと脈打つ。

「先輩……」
「今日は、来てくれて嬉しかった」
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