コクリバ 【完】
最後に会ったのは一昨日の夜。時間がない中、会いに来てくれた。
二人で喜八で夕飯を食べて、
それだけ……
何も特別なことはなかったけど、胸がいっぱいだった。
「彼氏の見送り?」
隣りの優しそうなお母さんが話しかけてくれる。
「はい。そうです」
「いいわねー。青春って感じ。……でも寂しくなるね」
「そうですね」
「何回か見送ったけど、やっぱり私はこの感じに慣れなくて、いっつも出航が近付くとソワソワしちゃうの」
「やっぱり寂しいですよね?」
「そうねぇ。いてほしい時にはほとんどいないからね。この子が生まれた時も、一か月くらい帰ってこなかったから、ほとんど一人で育ててるような感じ」
「そうなんですか」
「そのうち、慣れるのかなぁ。でも、それがいいって人もいるけどね」
ニッコリ笑ったその笑顔につられて私も笑顔になった。
村岡と名乗ったその人としばらくその場で話をしていた。
私が幼稚園教諭をしていると言うと、「ぜひ今度遊びに来て」と言われ、
「どうせ旦那はしばらくいないんだから、ゆっくり遊びに来てね。たまには大人用の料理も作りたいから、お昼を一緒に食べよう」
気さくな人柄に心が和む。
村岡さんと話をしていたら、反対の方からザワザワと歓声が上がり始めた。
白い自衛隊の制服を着た人たちが、艦から出てきて、それぞれの家族のもとに近付いていた。
ドキドキしながらその光景を眺めていたら、村岡さんのご主人もやってきて、子供を抱き上げている。
日焼けした顔に満面の笑みを湛えて、子供に何か言っている。
「おい」
隣りから低い声が聞えてきた。
「いきなり他の男を見つめてんじゃねーよ」
振り返ると、真っ白な制服を着こみ、白い制帽を被った高木誠也がそこにいた。
左頬を上げて笑っている。
これまで見たどんな姿よりも一番似合っていて、一番かっこいいと思った。
二人で喜八で夕飯を食べて、
それだけ……
何も特別なことはなかったけど、胸がいっぱいだった。
「彼氏の見送り?」
隣りの優しそうなお母さんが話しかけてくれる。
「はい。そうです」
「いいわねー。青春って感じ。……でも寂しくなるね」
「そうですね」
「何回か見送ったけど、やっぱり私はこの感じに慣れなくて、いっつも出航が近付くとソワソワしちゃうの」
「やっぱり寂しいですよね?」
「そうねぇ。いてほしい時にはほとんどいないからね。この子が生まれた時も、一か月くらい帰ってこなかったから、ほとんど一人で育ててるような感じ」
「そうなんですか」
「そのうち、慣れるのかなぁ。でも、それがいいって人もいるけどね」
ニッコリ笑ったその笑顔につられて私も笑顔になった。
村岡と名乗ったその人としばらくその場で話をしていた。
私が幼稚園教諭をしていると言うと、「ぜひ今度遊びに来て」と言われ、
「どうせ旦那はしばらくいないんだから、ゆっくり遊びに来てね。たまには大人用の料理も作りたいから、お昼を一緒に食べよう」
気さくな人柄に心が和む。
村岡さんと話をしていたら、反対の方からザワザワと歓声が上がり始めた。
白い自衛隊の制服を着た人たちが、艦から出てきて、それぞれの家族のもとに近付いていた。
ドキドキしながらその光景を眺めていたら、村岡さんのご主人もやってきて、子供を抱き上げている。
日焼けした顔に満面の笑みを湛えて、子供に何か言っている。
「おい」
隣りから低い声が聞えてきた。
「いきなり他の男を見つめてんじゃねーよ」
振り返ると、真っ白な制服を着こみ、白い制帽を被った高木誠也がそこにいた。
左頬を上げて笑っている。
これまで見たどんな姿よりも一番似合っていて、一番かっこいいと思った。