コクリバ 【完】
綺麗に並んだ自衛隊員の中で、背の高い彼の姿ばかりを見ていた。
偉い人の話の最中も、腕を後ろに組んだ彼の姿だけしか見えない。

「!」

突然の掛け声に、そこにいた全員が動いた時は身体がビクリとした。
全員揃って敬礼をしていた。

高木誠也も敬礼している。

初めて見るその姿に、また涙が出てくる。
まだまだ私が知らない高木誠也がいる。

慣れた姿で綺麗に敬礼しているとこや、沢山の仲間にからかわれながら笑っているとこ。

その笑顔に安心する。

艦に乗り込むとき、一瞬振り返った誠也に手を振った。
見えてるかどうか分からなかったけど……

そのまま、彼は艦の中に消えていった。


「行っちゃったね」

村岡さんの声がして隣を見ると、村岡さんの目が赤い。

何度見送ってもやっぱり別れは寂しいんだと、同志みたいに思えた。

「半年なんてあっという間ですよ」

誤魔化すようにそう言って、二人で泣きながら笑った。
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