コクリバ 【完】
整わない足取りで帰宅した私は、じっとしているのも落ち着かなくて、部屋の掃除をしていた。

そんな時、携帯電話が着信を知らせた。

一瞬彼かと思ったけど、絢香からだった。

「絢香ー、久しぶりだね」
「奈々ー!見たよ!見た!カッコよかったよー。あれ高木先輩でしょ?いつからそうなってたの?全然知らなかった。もー、なんで教えてくれなかったの?」

一方的にまくし立てる喋り方は、あの頃と変わってない。
やっぱり私にしゃべる隙を与えてはくれない。

「待って。絢香。何を見たの?」
「何って。テレビに決まってるじゃん。ニュース!今、放送されたやつ!」
「ニュース?」
「自衛隊のニュース。奈々が映ってるからビックリして叫んだよー。高木先輩と抱き合っちゃって、仲直りしたんだねー。もう、私、嬉しくて…だってさ、あんたずっと高木先輩のこと忘れられなかったでしょ?」
「え……待って。どういうこと?」

落ち着くように言って問いただすと、お昼のニュースで自衛艦の海外派遣のことを言ってたらしい。

その時の映像に見送りに行った私と彼の姿が映っていたと……

「ウソ……」
「本当だよ。高木先輩、海外行っちゃったんでしょ?寂しくなったらいつでもうちに遊びに来てね」

そう言った絢香の後ろから、絢香の子の駿介が騒ぐ声が聞えた。
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