コクリバ 【完】
「もう、俺のもんだから…」

不意に頭上から聞こえる低い声。

その言葉にも何も返せない。
ただひたすら先輩の胸にしがみつくしかできない私。
なんてカッコ悪いんだと思うけど、どうしたらいいのか分からない。

誰か教えて。

ただこの状況にいっぱいいっぱいで
「いいのか?」
って聞かれても、ただ首を縦に振るしか出来ない。

「ふっ…」
笑われてる。

「でも付き合ってることは言うなよ」

その言葉で、あぁ先輩と付き合ってるんだって分かったくらいだった。

高木先輩と付き合ってるなんて誰にも言えない。
絶対不釣り合いだと言われる。
って言うか、私が一番不釣り合いだって分かってる。

だけど、この優しい腕を忘れることは出来ないと思う。

そうして、初めて、彼氏ができた。
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