コクリバ 【完】
「泊まりだぞ。連れて行けるか」

兄は呆れている。
それでも私だって引けない。

「だって、うちの高校のバスケ部でしょ?応援したいよ。それにまー君も出るんでしょ?」

まー君。菊池雅人のことを昔こう呼んでた。
今ではあんまり話さなくなったけど。

「ね!よし君、いいでしょ?」

よし君。菊池義人のことはこう呼んでた。
幼い頃は、優しいお兄さんって感じだった。

「奈々ちゃんに、その名前で久しぶりに呼ばれたなー。いやー、これは断れないぞ。でも、大学生の中に女子高生が一人っていうのは、いくら奈々ちゃんでも、ちょっと……」

そう言って、中山さんの方を見ている。

「俺は、奈々ちゃんが一緒でも全然いいけど」

中山さんは、私の味方をしてくれるみたい。

「じゃ、友達誘う。それならいい?」

一応、兄にお伺いを立ててみた。
万が一「しょーがねーなー」って、許してもらえるかもしれないと思って、

「よくない!おまえは留守番」

敢無く撃沈。

だけどそんなことくらいで私の恋のパワーは消せはしない。

「じゃ、一人で行く」
「は?」
「それか、女子高生だけで行く」
「バカか」
「じゃ、同じクラスの男の子と行く」
「奈々!」
「ね。お兄ちゃんと行った方が安全でしょ?」
「……」

兄は、本当は私に甘いのかもしれない。
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