コクリバ 【完】
薄暗い部屋に絢香と二人閉じ込められた。そんな感覚だった。

絶対に部屋から出ないと兄にきつく約束させられたけど、絢香はニコニコしている。
たぶん私も。

「いつ来るかな…」
「オサムッチも絢香のこと好きだったんだね」
「好きって…まだ、何も言われてないし…」
「だから今から言いにくるんでしょ?」
「キャー。もうダメ~」

枕に顔を押し付けてる絢香が可愛い。

私はこんな風に、高木先輩の目に可愛く映っているだろうか。

絢香と二人どうでもいい話はするけど、心の中では待っていた。

オサムッチが来るのを、
ともちゃんが帰ってくるのを、
そして、高木先輩が来てくれるのを……

コンコン

ついにドアをノックする音が。

絢香と顔を見合わせて、走ってドアまで行く。
絢香がのぞき窓から覗いて、すぐに振り返って、嬉しそうに口を隠した。

なんだ、オサムッチか……

「はーい。どうぞ」

絢香が嬉しそうにドアを開けると、

……そこには高木先輩が立っていた。

黒いトレーニングウエア姿で、手には飲みかけのペットボトルを持って。

「ちょっといいか…」

高木先輩の低い声がホテルの廊下に響くと、私の胸がギュウと動いた。

「どうぞ、中に…」
絢香が先輩を招き入れる。

ドキドキが早くなる。
もうみんなに聞こえてるんじゃないかってくらい、ドキドキが止まらない。

「二人で話させて」
先輩が絢香の方を見て言う。

「はい、私はちょっと飲み物買いに行ってきます」

そう言って絢香が出て行くと、
シンとした部屋に先輩と二人きり……

緊張で一歩も動けなくなった。
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