コクリバ 【完】
芸術論
あの試合から数日。
梅雨も明けて7月に入った。
期末テストも無事に終わり部活も始まり、私は市原先輩のモデルを続けていた。
「先輩は引退とかしないんですか?」
「引退してほしいの?」
「いえ、そうじゃなくて。受験するんですよね?」
「あぁ。俺、推薦だから。今度の県展に入賞すれば確実に入学できる」
「そういうもんですか……」
「奈々ちゃんは?美大行くの?」
「美大なんて、とんでもないです」
モデルをやっていることも忘れ、顔の前で手を振った。
美術部としての活動が終わってから市原先輩のモデルをしていたけど
陽が長いこの時期、美術室もまだ明るい。
「奈々ちゃんは夢あるの?」
「ないですね」
「行きたい学校とかは?」
「まだ全然分かりません」
「そっか。俺も1年のときはそうだったな~」
そんな穏やかな時間を突然、
ガラッと開いたドアの音が遮った。
そちらを向いた市原先輩が目を細めるのが見えた。
「何しに来たんだよ。つーかノックしろよ」
市原先輩は、その言葉にも態度にも不機嫌オーラがにじみ出ている。
「おまえが変なことしてないか見にきたんだよ。
ノックなんか誰がするかよ」
ドアの方向から聞こえたのは、高木先輩の低い声だった。
梅雨も明けて7月に入った。
期末テストも無事に終わり部活も始まり、私は市原先輩のモデルを続けていた。
「先輩は引退とかしないんですか?」
「引退してほしいの?」
「いえ、そうじゃなくて。受験するんですよね?」
「あぁ。俺、推薦だから。今度の県展に入賞すれば確実に入学できる」
「そういうもんですか……」
「奈々ちゃんは?美大行くの?」
「美大なんて、とんでもないです」
モデルをやっていることも忘れ、顔の前で手を振った。
美術部としての活動が終わってから市原先輩のモデルをしていたけど
陽が長いこの時期、美術室もまだ明るい。
「奈々ちゃんは夢あるの?」
「ないですね」
「行きたい学校とかは?」
「まだ全然分かりません」
「そっか。俺も1年のときはそうだったな~」
そんな穏やかな時間を突然、
ガラッと開いたドアの音が遮った。
そちらを向いた市原先輩が目を細めるのが見えた。
「何しに来たんだよ。つーかノックしろよ」
市原先輩は、その言葉にも態度にも不機嫌オーラがにじみ出ている。
「おまえが変なことしてないか見にきたんだよ。
ノックなんか誰がするかよ」
ドアの方向から聞こえたのは、高木先輩の低い声だった。