似た異質
似た異質
『君は僕に似ている』
彼はそう言う。たしかにそういうところもある。好みや過去も似ている。でも、私は『違う』と思っている。
私達は全く別の違う人間。
彼には愛がある。かつて自分を傷つけ侮辱した相手を赦す心がある。受け入れる器がある。私にはそれがない。いつまでも過去を引きずっている。赦す気なんて毛頭なく、むしろ攻撃する材料を積極的に探してさえいる。
なのに似ていると言われると『違い』を口にすることがはばかられてしまう。
楽しいのに、良い自分になれるのに、彼と話していると遠い距離を感じてしまうこともある。
似ていても、全く同じ人間なんてこの世にはいない。頭では理解できるそのことを、時に人は受け入れられず感情的になる。
私を美化しないで。理想像に当てはめないで。私は私であって、過去にあなたが愛したような人々ではないのだから。
《完》