好きな人の弟を、利用した
「あの……」

「あ、そー言えば、ついさっきまでたっくんいたのよ。一足違いで帰っちゃったけど」

「えっ!?……あ、そ、そうなんですか……」

『たっくん』と言うワードに、ドキッ!と心臓が跳び跳ねる。

「まーったく、夏夜ちゃんと恋人同士になれたのがよっぽど嬉しかったのね。ここ来るたんびにノロケちゃってまー。今日だって、『会社のみんなに知られちゃいました』なんて言って、満更でもない顔して。ほんっと迷惑極まりないわ」

ブーブー文句を言っているけど、ハナちゃんさんの顔はどことなく嬉しそう。

「そう、ですか……」

私はなんて答えたら良いのか分からなくて、苦笑いを浮かべる。
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