好きな人の弟を、利用した
「すい……ませっ…遅れて…しまいました……」

頬から流れ落ちる汗をシャツの袖口で拭っている。


「……まだ時間前なんだから、そんなに急がなくても良かったのに」

私はバッグからハンカチを取り出して、差し出した。

「いえ…汚れて……しまいます、から……」

差し出したハンカチをそのまま押し戻して来たので、オリャッ!と、流れ落ちる汗を勝手にハンカチで拭ってやった。

「ちょっ……!」

「素直に受け取ってよ。その為にあるんだから」

ハイ、ともう一度差し出すと、「ありがとう、ございます……」と呟いてやっと受け取った。
< 188 / 334 >

この作品をシェア

pagetop