好きな人の弟を、利用した
「あ、あの……夏夜さん……」

佑くんの声が上ずっている。

そんなのもお構いなしに、私は何も考えないで一番近いホテルに入った。

室内が映し出されたパネルの前に立つ。

「……ここで良い?」

私は適当な部屋を指差した。

「え……あの……」

「良いよね」

パニック状態の佑くんを無視して勝手に部屋を決め、鍵を受け取り、部屋へと向う。

その間も目を白黒させている佑くんを、見て見ぬ振りをした。
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