好きな人の弟を、利用した
さっき見た光景が、頭から離れない。


思いっきり目を瞑ってみても、思いっきり頭を振ってみても、離れてくれない。

佑くんはなんで、近藤 和架子なんかと一緒にいたんだろう。

二人でご飯を食べに行く位、仲良くなっていたなんて。

それとも、佑くんはもう私なんかどうでも良いのだろうか。


グルグル、グルグル。

ネガティブな思考が止まらない。

「私、いつの間にかこんなに……佑くんの事を好きになってたんだな……」

不意に、ハナちゃんさんの言葉が、頭の中に響いた。


━『人の気持ちを弄んだ罰よ』━


と。

「……っ……」

泣いても、優しく抱き締めてくれる佑くんの腕はない。

枕に顔を埋め、声を押し殺して泣いた。
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