好きな人の弟を、利用した
「みなさん、止めてくださいよ。夏夜さんを困らせないで下さいっ」

佑くんがそう言って、私を庇ってくれた。

「ヒュ~♪優しい旦那さま~~♡じゃ、ジャマ者達は退散しまーす」

なんて、からかい混じりにみんなが散らばる。

気を利かせたつもりなのか、私と佑くんの周りから、人がいなくなった。

なんとなく、みんなが私達から距離を取ってくれている様にも思える。

……なんだかんだで、いい人達ばかりだ。



「……お疲れ様」

佑くんのグラスが空になっている事に気が付き、ビールを注ぐ。

「あ、ありがとうございます……」

そのビールを一口飲んで、ふぅ……とため息を吐いた。

なんだか少し、しんどそうだ。

「あ……もしかして、酔った?お水にしよっか?」

私は、近くを通った店員さんにお冷を頼む。

「すみません……」

「んーん。どういたしまして」

運ばれて来たお冷を受け取り、佑くんに手渡すと、それを一気に飲み干した。
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