好きな人の弟を、利用した
「夏夜さんっ!大好きですっ!!」
泣きながらの熱烈な愛の告白。
本当は感動の場面なんだろうけど、なんだか佑くんが可愛くて、可笑しくなってしまった。
「うん。私も大好き」
そう答えて、佑くんの背中に腕を回す。
(やっぱり、佑くんに抱き締められると安心するな……)
目をつぶり、余韻に浸っていると、『おめでとー!!』と言う歓声と拍手が聞こえて、二人でハッとする。
━━そう。
今まで二人の世界に入り込んでて忘れてたけど、ここは街中。
いつの間にかギャラリーは増え、私達は注目の的だった。
は、恥ずかしい!
なんて恥ずかしい二人なんだ。
早くこの場から立ち去らねば!
私達は目を会わせ、「お騒がせしましたーっ!!」と走り出した。
後ろで「ヒュ~♪」と言う口笛が鳴り響く。
「夏夜さん、手っ!」
「うん!」
しっかりと佑くんの手を握り、二人、笑いながら走り出した。