好きな人の弟を、利用した
それ以上は言わずに、私達はジトーッと睨んだ。

すると、

「本当にごめんなさい!!」

と叫びながら、土下座でもするんじゃないか?と言う勢いで佑くんが頭を下げた。

「その噂、流したの僕なんです!」

やっぱり。

「……理由は?」

「………引きませんか?」

チラッと頭だけを上げて、言い難そうな顔をする。

「理由による」

と答えると、オズオズと話し出した。

「……あの夜。その……ホテルに泊まったあの日から僕達、なんとなくギクシャクし始めたじゃないですか。その後も、僕が何も言わずに夏夜さんの部署に移動して来たりして……連絡も取れなくなって……もうダメか……って思ったんです」

確かにあの時、私は佑くんを避けてた。

自分の気持ちの整理が付かなくて、顔を合わせ辛かったのは、否定出来ない。
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