好きな人の弟を、利用した
それからしばらく経ったある日。

昴が一人の女性と親しそうに話をしている所に出くわした。

僕は、その女性の顔を見た瞬間、心臓が飛び跳ねる。

なんと、今目の前にいるのはあの面接会場にいた女性だったからだ。

僕の願いが通じたのか、受かっていたのだ。


『あっ、佑っ!』


僕の姿を見付けた昴が、手招きをする。

高鳴る心臓を抑え、『どうも……』とだけ挨拶をした。

そんな僕にこの女性はニコッと微笑み、

『松山 夏夜です。よろしくお願いします』

と丁寧に挨拶を返してくれた。


『松山 夏夜』さん。


僕はその名前を一瞬で覚えた。

それと同時に、気になった事があった。

どうして夏夜さんと昴は一緒にいたんだろう。

その疑問を察知したのか、昴がこうなった経緯を話してくれた。
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