好きな人の弟を、利用した
失恋が確定して落ち込んでいたある日。

同僚が僕と昴の事を話している所に遭遇した。

僕には気が付いていなかったのか、散々僕と昴を比較しながら悪口を言って笑っている。

慣れているとは言え、腹が立たない訳じゃない。

グッと拳を握る。


『ちょっと!』


その声に、僕だけじゃなく、悪口を言っていた人達も一斉に振り向いた。

そこには、夏夜さんが立っていた。

夏夜さんは、

『双子だって考え方や能力が違って当たり前でしょ!一人一人の人間なんだから!それをある事ない事コソコソと。陰口叩く暇があるんなら、手を動かしなさいよ!』

と、その場にいた人達を一蹴してくれた。

夏夜さんの剣幕に、みんながたじろいでいる。

それを見て、フンッ!と、夏夜さんは踵を返して行ってしまった。


……僕は、泣きそうになった。


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