好きな人の弟を、利用した
プリプリと怒るフリをしながら部屋から出て、居酒屋を後にする。

多分、女子達はあたしをネタに大盛り上がりだろう。


でも今は、そんな事どうでも良い。


繁華街を早足に抜け、静かな道に出る。

何人か道を歩いている人がいたけど、涙が溢れて止まらない。

すれ違う人が、不審な目であたしを見る。

でも、拭っても止まらない事を知っているから、あたしは流れるままに涙を流した。


一本向こうの通りは、クリスマスのイルミネーションで明るく輝いている。

ビルの隙間から見える、キラキラ光る大きな星。

ツリーのてっぺんに飾られている物だろうか。

今のあたしには眩しすぎて、目をそらす。


こんなにキッパリフラれたのは、いつ振り位だろうか。

確かに悲しい。

でもなんだろう。この清々しい気分は。

これで、ようやくこの切ない片想いから開放される。

いつまでも叶う事のない恋心を胸に秘めておくのは、もう限界だったから。

あれぐらいバッサリ行ってくれなければ、あたしはまだグズグズと佑くんの事を想い続けていただろう。
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