好きな人の弟を、利用した
そんなこんなで、失恋を悲しむ暇も、新しい恋を探す暇も今はない。

どうやったらコイツが一人前になるのか、試行錯誤の毎日。

でもそれが、なんだか楽しい。


『近藤先輩!次はどうしますか!?』


仔犬の様にあたしの後を付いて来て、目をキラキラさせている。


『じゃあ、次は……』

『はいっ!』


最近は、この懐かれ方に心地好さまで感じているんだから始末に終えない。


『……近藤先輩?どうかしましたか?』

『え?……な、なんでもないわ!ホラ、行くわよっ!』

『あっ、待って下さいよ!』


あたしは白河くんを置いて、ズンズン先を歩く。

多分、真っ赤になっているでろう顔を見られたくなかった。


『近藤先輩!』

『なによ?』

『今日、一緒にご飯行きませんか?』

『は!?な、なんであんたなんかと!』

『良いじゃないですか~!俺、最近ガンバってると思いませんか?それのご褒美だと思って!ね?ね?』

『うっ……』


おねだりをする顔が可愛くて、あたしは言葉に詰まった。


『しょ、しょうがないわね!付き合ってあげるわよ!』

『よっしゃ!!』


白河くんは余程嬉しかったのか、ガッツポーズをして、口を大きく開けて笑った。



━━トクン……。



その笑顔に、あたしの心臓が脈を打つ。


『ヤル気出て来たーっ!近藤先輩!早く早く!』

『わっ!』


白河くんに手を捕まれ、あたし達はそのまま走り出した。


『ちょ、ちょっと待って!』

『待ちませんっ!』


白河くんが振り向いて、また口を大きく開けて笑った。


その度に、あたしの胸が高鳴った。

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