好きな人の弟を、利用した
「……お腹、いっぱいですね」

「……うん。ありがとう。ご馳走してもらっちゃって……」

「……気に、しないで下さい……。僕から……お誘いしたん、ですから……」

さっきのお礼で、私が支払いをしようと思っていたのに、先に『杉崎弟』が支払いを済ませていた。

「あの……今度お礼するから」

「……はい。楽しみに……していますね……」

顔は見えない。

だから、声で分かる。

(すごく、嬉しそう……)

隣を歩く、『杉崎弟』を見て俯いた。
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