好きな人の弟を、利用した

「……あの……」

再度声を掛けられ、ハッとする。

「あぁ、えっと……」

断らなきゃ。

『ごめんなさい』と口を開きかけた時、

「わっ!」

風が吹いて、『杉崎弟』の前髪を揺らした。

「っ……!」

一瞬、息が止まる。

普段、長めの前髪で隠れているその素顔は、兄の『昴』にそっくりだった。

(全然分からなかった……そりゃ双子だもん。似てて当然っちゃ当然……)

その時、私の中の悪魔がひょっこり顔を出し、ある提案をして来た。
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