太陽が愛を照らす(短編集)
クラス全員分のノートを持って職員室に行った。さつき先生は小テストの採点をしているところで、俺が行くとそれをさっと隠して俺を見上げる。
「ありがとう、寺田くん」
「それこの間の小テストでしょ? 俺どうだった?」
聞くとさつき先生はふっと笑って「寺田くん自身がよーく分かってるでしょ」なんて言う。
「満点?」
「開始三分で寝始めたひとが、どうだったなんて聞かないの」
「だって簡単だったもん、あれ」
「簡単ねえ。次はもう少し難しく作ろうかな」
悪戯っぽく言って、さつき先生は俺を見上げる。
「ねえ、寺田くん。いま暇?」
「え?」
「暇そうだね」
暇、ではない。今はさつき先生を見るのに忙しい。
「身体動かしたくない?」
「身体?」
「そう。先生と一緒に身体動かそうよ」
健全な男子高校生相手にこんな言い方。誘っているのか、からかっているのか。それとも天然なのか。
正解なんてどうでもいいくらい、俺は、さつき先生が好きだった。