太陽が愛を照らす(短編集)
どうにか秋人を部屋まで運んで、ベッドに投げ捨て横に座る。
疲れた。なんて日だ。小泉さんに心配かけないためにも、極力秋人のことは考えないように心掛けていたのに、酔った秋人を迎えに行って、まさかあんな話を聞くとは。
気付いてあげられなくてごめんね。
出かかった言葉を飲み込む。多分秋人はそんな言葉求めていないし、ただ残酷なだけだ。
「エリー……」
掠れた声。寝言のようだ。眠りながらもけらけら笑っている。
「エリ、次の休み、狩り行こうぜー」
どんな夢を見ているのかは大体分かる。しかも登場人物はわたしらしい。
それにしても心臓がうるさい。今にも破裂してしまいそうだ。どうして。どうしてこんなことに。
十年も一緒にいた。馬鹿やって笑って、怒って、泣いて。それでも飽きずに一緒に過ごしてきたというのに。きっとわたしの家族よりも、秋人といる時間のほうが長かったのに。どうしてわたしは気付かなかったんだろう。
今まで、落ち込んだ秋人を慰めたり励ましたりしていたのはわたし。でももうできない。できないけど、しちゃいけないけど。ああ、あたま撫でたい……。
ベッドに座ったまま、頼りなさげな月に目をやり、ため息をついた。
(了)