太陽が愛を照らす(短編集)






 一仕事終えても、まだ明かりはつかない。
 闇に浮かぶ月が、いつも以上に綺麗に見えた。

 カーテンを開けて外を眺めていたら、ベッドから涼介がわたしの名を呼ぶ。

 暗闇に目が鳴れたおかげで、ベッドまで真っ直ぐ歩いて行けた。

「知ってるか。一九七七年に、ニューヨークで大停電があったんだ」

「へえ」

「停電は三日も続いて、その九ヶ月後にはベビーブーム」

「あっは」

「みんな、考えてることは同じだな」

 そうだね。みんなこうやって、暗闇の中、愛を囁き合ったんだね。


「……愛してる、涼介」

「知ってる」


 多分愛に必要なのは、伝えることと感じることなんだ。

 不確かなものなどない。囁き合って伝え合えば、確かな形ができあがる。
 それはきっと、とても難しいことかもしれないけれど。








(了)
< 9 / 28 >

この作品をシェア

pagetop