太陽が愛を照らす(短編集)
一仕事終えても、まだ明かりはつかない。
闇に浮かぶ月が、いつも以上に綺麗に見えた。
カーテンを開けて外を眺めていたら、ベッドから涼介がわたしの名を呼ぶ。
暗闇に目が鳴れたおかげで、ベッドまで真っ直ぐ歩いて行けた。
「知ってるか。一九七七年に、ニューヨークで大停電があったんだ」
「へえ」
「停電は三日も続いて、その九ヶ月後にはベビーブーム」
「あっは」
「みんな、考えてることは同じだな」
そうだね。みんなこうやって、暗闇の中、愛を囁き合ったんだね。
「……愛してる、涼介」
「知ってる」
多分愛に必要なのは、伝えることと感じることなんだ。
不確かなものなどない。囁き合って伝え合えば、確かな形ができあがる。
それはきっと、とても難しいことかもしれないけれど。
(了)