転職したら双子のイケメンがついてきた

「お花をください」


「はい、いらっしゃいませ」


年間通してだけれど、この時期はとくに、お仏壇にお供えする花がよく売れる。


お盆はお墓参りの墓花がよく出る。
そしてその時期は、マキやホオズキ、梅の枝など付け足すので、お仏壇も豪華になる。


大抵店頭にあるけれど、夏場は傷みが早いので、店内に入れる。
強い西陽も当たらないように入り口の向きも考えられている。


「こんにちは」


いつものお婆ちゃんだ。
手押し車で畑の様子を見がてら散歩して、仏壇のお花を買いに来たついでにお喋りして帰る。


「お兄ちゃんはいますか」


「キクさん、こんにちは」


もう名前を覚えた。
笑顔で応える。


綿のモンペに割烹着、頭に手拭いをした昔ながらの可愛らしいお婆ちゃんだ。


「あっ、奥に。掛けてお待ちください」


ガラスドアを閉め、店内の小さな木のベンチに案内する。まだまだ残暑が厳しい。


「孫が怪我して、入院してしまって」


「それは心配ですね」


真言さんが話す間、私は冷たいお茶を入れて差し出す。


キクさんも汗だくだ。


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