転職したら双子のイケメンがついてきた
お食事の部屋に案内されると、お父様がいらっしゃった。胸にナプキンを付け、席についている。
「やあ、久し振りだね」
「ご、ご無沙汰してます」
新たに緊張する。
白髪混じりで口髭の整った、穏やかな初老の紳士だ。
父に雰囲気が重なって見え、親しみが持て、妙に安心する部分もあった。
お母様は姑であり、やはり女同士ということもあって、いつもどこで作法をチェックされているかと、常に気が張る。
そして豪華な食卓だ。
天井には当たり前のようにシャンデリア。
長い長い真っ白なレースのクロスの掛けられたテーブルに、スタンドのキャンドル。
お肉に温野菜。
彩り鮮やかな料理がきれいに並べられている。
ああ、私には、礼儀も作法もない。
ナイフもフォークも満足に使えず、ただ音を立てずに静かに口に運ぶしかできない。
「美味しい……」
思わず言葉が出た。
緊張でわからないと思っていたはずが、一口であまりの美味しさに感動した。
いい素材だけではない。それを生かされた味付けが素晴らしい。
真言さんの舌が肥えている訳だ。