転職したら双子のイケメンがついてきた
「…今日は帰りましょう」
震える声を押さえて言う私に、言葉を飲み込むと、真言さんはエンジンを掛け、車を出した。
その音で壬言さんがこちらに気付いたことを、バックミラー越しに真言さんは確かめていた。
「…やっぱり、問いただすべきではないですか??」
「もういいです。このまま私がいなくなるだけで、すべてが丸く収まるなら」
確かめて何になるのか。
他に好きな人ができたから、アレルギーも出ないみたいだし、色気も可愛げもないし。やっぱり結婚はできないと。
言われてしまえばそれまでだ。
もう慣れた。
いや、慣れてどうする私。
ああまた、出てしまった。
ネガティブ思考の悪い癖が。
こんなことでは本当に、一生恋愛どころか結婚なんて、夢のまた夢だ。
さようならみなさん。
「…口外はしませんから、いろいろとお世話になりました」
ネガティブもここまで来ると体質だな。いっそのこと引き籠りにでもなるか。
いやでも、また仕事探さなきゃだな。そこからだ。
私の人生、また振り出しに戻る。
ああそうだ。部屋も探さなきゃ。アパートも引き払っちゃったし、お城どころか、お店にも戻れない。