転職したら双子のイケメンがついてきた

「…今日は帰りましょう」


震える声を押さえて言う私に、言葉を飲み込むと、真言さんはエンジンを掛け、車を出した。


その音で壬言さんがこちらに気付いたことを、バックミラー越しに真言さんは確かめていた。


「…やっぱり、問いただすべきではないですか??」


「もういいです。このまま私がいなくなるだけで、すべてが丸く収まるなら」


確かめて何になるのか。
他に好きな人ができたから、アレルギーも出ないみたいだし、色気も可愛げもないし。やっぱり結婚はできないと。


言われてしまえばそれまでだ。


もう慣れた。
いや、慣れてどうする私。


ああまた、出てしまった。
ネガティブ思考の悪い癖が。


こんなことでは本当に、一生恋愛どころか結婚なんて、夢のまた夢だ。


さようならみなさん。


「…口外はしませんから、いろいろとお世話になりました」


ネガティブもここまで来ると体質だな。いっそのこと引き籠りにでもなるか。


いやでも、また仕事探さなきゃだな。そこからだ。


私の人生、また振り出しに戻る。


ああそうだ。部屋も探さなきゃ。アパートも引き払っちゃったし、お城どころか、お店にも戻れない。


< 165 / 383 >

この作品をシェア

pagetop