転職したら双子のイケメンがついてきた
すっきりと整えられ、あまり無駄なものもない。整理上手は変わっていなかった。
片付けられないタイプは、一人になるとゴミ屋敷になってしまう。
気にはなるだろうけれど、どうして別れたかとか、なにがあったとか、詮索してこないのは昔から沙紀のいいところだ。
食事は外で済ませてきたので、帰ってからお茶を飲んでひと休みする。
「その辺にあるの適当に使って。明日もあるから、早めに休むね」
「うん、ありがとう」
本当に静かだ。
車の通る音がたまにするくらいで、街にいることを忘れそうになる。
「真来なら、幸せになれるから。ネガティブすぎるのよ、もとが」
「だってさ」
「美人なのにさ、憎らしい!!イケメンだから逃げられるの」
頬をむにっとつねられて、意図せず、ぽろっと涙が出た。
「えっ!?痛かった!?ごめん!!そんなに強くつねったつもりは」
慌てて手を離す。
「…違うの、思い出しちゃって」
「ああっ!!やっちまった!!ごめんよっ!!」
頭をわしわしと撫でる沙紀。
「え~ん」
抱き締められて、子供のようにくしゃくしゃに泣いてしまった。
「よしよし、辛かったね、もう大丈夫だからね」
沙紀はやっぱりいい子だった。