転職したら双子のイケメンがついてきた
そして。
タダで置いてもらうわけにもいかないと、沙紀が帰るときはメールをしてもらい、掃除、洗濯、食事の支度をしておく。
「おかえりなさいっ」
「主婦みたいだね、ご主人様になった気分だわ。悪くないかも」
苦しゅうない、と頷く。
部屋着に着替え、冷蔵庫から缶ビールを出しながら、苦笑いする沙紀。
「だからって、結婚はしてもらわなきゃ困るわよ」
「そりゃそうだ」
「ここだけの話、茉里の結婚線、薄かったらしいよ」
言いにくかったけれど、沙紀には言ってみた。
「やっぱりね~、なんか前に占い師に見てもらったときもそうだったって」
「そ、そうなんだ」
「茉里、認めたくなくて、怒ってお金払わずに帰っちゃったらしいけど」
気持ちはわからなくないけど、さすがにそれはダメだろう。
「まあ、この年頃は、複雑だよね、いろいろと」
私ももしかしたらお城に住んでいたかもしれないのに。
いや、別にお城に住みたかったわけでもないし、お姫様になりたかったわけでもない。
壬言さんのそばに、ただいたかった。
ささやかな幸せが、手の届かないところに行ってしまった。