転職したら双子のイケメンがついてきた

「お風邪を引いてるんだよ」


「弥刀さ…パパ」


言い掛けて慌てる。
仕事を切り上げて急いで来てくれたらしい。
ワイシャツが汗だくだ。


「パパ!!」


やはり心細かったのか、父親の顔を見て安心したようだ。


「そっか、じゃあ仕方ないね。ママも気を付けなきゃ」


えへっと、頭をコツンとしておどけて見せる。きゃはは、とやっと声を出して笑ってくれた。


「ちょっとだけ、ママと先生のところに行ってくるね」


言うと、私を部屋の外へさりげなく出してくれた。
待ち合いロビーに行き、長椅子に腰かけると、ふーっとため息をつく。肩の力が抜ける。


「お疲れ様です、無理をさせて申し訳ない」


冷たい缶コーヒーを差し出して、肩を解してくれた。


「あっ、すみません。ただでさえ母親になったこともないし、周りに小さな子供もいなかったから世話したこともなくて。お役に立ててるかどうか」


首を横に振ると、


「いてくださるだけでいいんです。子供にとってはとくに」


抱き締められたい、頭を撫でてほしい。それだけでも愛情は伝わるものか。


私も小さい頃はそうだったな。
今でもそうか。



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