転職したら双子のイケメンがついてきた


建物ギリギリの、フェンスの下の隙間から、上半身を乗り出して手を伸ばして何かを拾おうとしている。


「何してるの!?危ないから!!こっちに来なさい!!」


「ママにもらったヌイグルミ、落としちゃったの」


もう泣きべそをかいている。
やっとの思いで、ダクトの張り巡らされた隙間を縫って近付いてよく見る。


大人の手のひらに入るほどのウサギのヌイグルミが柚希のさらに一段下のヘリに引っ掛かるように落ちている。


そういえば、病室でもずっと握っていた。


「ママにもらったお守りだよ??覚えてるよね??」


知らない。
知るはずがない。


だからといって、放っておいてこっちに来なさいなんて、言えない。


まだ小さな彼の宝物だ。


「覚えてるよ、もちろん」


「……嘘だ」


「えっ…」


「あなたは僕のママじゃない!!だから知るはずない!!パパ以外の人とキスしてた…」


涙声が震える。
やっぱり見られていた。
最低だ私は。



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