転職したら双子のイケメンがついてきた


「ど、どうしてここに??…今、どうしてるんだ」


別館との連絡通路で歩きながら。ひと気はほとんどなかった。
曇り空で外は薄暗い。


「……東京の、総合病院で看護士してたんだけど、移動になってこの病院に。……バツついちゃったの」


「噂には聞いてたが、……結婚、してたのか」


「向こうの先生とね」


ありがちな話だ。
離婚したから周りも気を遣うしやりにくいし。それもあって人事異動になったのか。


「……そうか」


どこを見るでもなく、落ち着かない壬言。


「彼女、できたの??可愛い子ね。アレルギーは治ったんだ」


ピクリと眉を動かし、唇を触る。


一番多感な高校時代に、一番苦しんでいた壬言。


野球部の試合の応援に駆り出され、勝って女子に抱き付かれ、倒れて保健室に運ばれてから、誰も寄り付かなくなってしまった。


好きでもないのに抱き付いただけで蕁麻疹が出て倒れたのでは。


好きな女の子が出来ても、手も繋げない。フォークダンスなんて夢の話だ。ずっと運転手用の手袋かタオル越し、もしくは長袖だった。



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