転職したら双子のイケメンがついてきた

―――そして。
お店に入る前に、車の中で不意に近付いて、ネックレスを付けてくれた壬言さんにドキッとした。


いい匂いがした。
って喜んでる場合じゃない。


「しっかり聞き込みして来いよ」


いや、だからって個人情報簡単には教えてもらえませんってば。


「いらっしゃいませ。ご予約の、榮喜様、ですね」


白を基調とした2階建ての建物に、首元まである真っ白な制服を纏い、髪を綺麗に梳き上げた女性スタッフに丁重に迎えられ、緊張する。


「…あっ、…はい」


顔がひきつる。
こういう女性らしい場所は、どうも苦手だ。ガテンでもないけれど、むしろ土臭い、さばけた現場が落ち着く。


入り口を入って狭い廊下を抜ける。両サイドにベージュのカーテンで仕切られた個室がある。


壁一面が、全て真っ白だ。
物音もほぼしない。


「こちらへどうぞ」


スタッフに案内され、カーテンを開け奥の個室に入る。


なんじゃこりゃあ、と
また言いかけて飲み込んだ。


「本日はフェイシャルからデコルテまでのオイルマッサージとメイクまでのコースでよろしいですね??」


聞いてませんが、と思いつつ、


「あっ、はい」


「いらっしゃいませ、緋居様」


中に入ってカーテンを閉めたとき、外で声がした。



< 273 / 383 >

この作品をシェア

pagetop