転職したら双子のイケメンがついてきた


―――昔は真面目な学生を演じていた緋居。


父の職業柄、真面目に振る舞った方が利口なのだ、と子供ながらに感じていた。


緋居が生まれてすぐに他界し、話にしか聞いていないけれど、父方の祖父が豪快な人物だったようで、隔世遺伝、というのだろうか。


俺様で遠慮を知らない祖父は派手な遊び人だったらしい。
何よりルックスには秀でていた。


友人知人の彼女や妻をも隙あらば誘惑し、近しい者には煙たがられていたようだ。


父もそうだったけれど、反面教師で真面目に生きていた。
はずだった。


けれど、哀しいかな年を重ねるごとに祖父に中身は遺伝していた。


ある日転校してきた由利に一目惚れした緋居。


―――放課後、部活の時間。


バレー部だった彼女が、真新しいシューズで靴擦れができたとびっこを引いて1人で体育館から出た彼女に、居合わせた緋居が絆創膏を差し出した。


「ありがとう」


痛みに堪えながら微笑んだ顔に、試しに告白してみた。


「いいよ、付き合っても」


あっさり受け入れられたことに驚いた緋居。自分の見た目は悪くはないのだと。


けれど本当は他にも本命が居たことを、このときはまだ知らなかった。


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